【連載】タランティーノの脳内ライブラリーが炸裂する。21世紀のTOP20から解剖する『キル・ビル』の「偏愛とリミックス」
静寂は、轟音によって破られました。
前作『ジャッキー・ブラウン』から6年。
「タランティーノは大人になった」と評された彼が、2003年に放った復帰作は、黄色いトラックスーツを着た女が日本刀で88人のヤクザを斬り捨てる、映画史上もっとも過激で、もっともデタラメな復讐劇でした。
『キル・ビル Vol.1 & 2(Kill Bill Vol. 1 & 2)』。
カンフー、チャンバラ、マカロニ・ウェスタン、そしてアニメ。
彼が愛する「B級ジャンル映画」のすべてをミキサーにかけ、A級の予算と技術で煮込んだこの作品は、まさに「タランティーノ映画祭」そのものです。
本連載は、タランティーノ自身が『The Bret Easton Ellis Podcast』で語った「21世紀の映画ベスト20」をリスト化し、そこから彼の創作の源泉を逆引きで解剖する試みです。
連載第5回となる今回のテーマは、「理屈なき熱狂」。
比較対象として召喚するのは、タランティーノの血肉となっている以下の4作品です。
- 『バトル・ロワイアル』: 彼が「1992年以降で最高の映画」と公言してやまない日本映画の金字塔
- 『マッドマックス 怒りのデス・ロード』: セリフ不要のノンストップ・アクション
- 『チョコレート・ファイター』: CGなしで挑む、痛みが伝わる武術
- 『ショーン・オブ・ザ・デッド』: ジャンル映画への愛とパロディ精神
なぜ彼は、これらの「暴れる映画」を選んだのか?
それは『キル・ビル』が、高尚な芸術性よりも、「映画ってこういうのが観たかったんだろ?」という初期衝動と快楽だけで作られているからです。
理屈や整合性は、一旦忘れてください。
タランティーノの脳内にある「最強のオタク・ライブラリー」へ、ようこそ。
本記事のポイント(この記事でわかること)
- 『バトル・ロワイアル』との共通点:
深作欣二監督から受け継いだ「血しぶきの美学」と、制服少女(GOGO夕張)への偏愛。 - 『マッドマックス』&『チョコレート』との共通点:
CG全盛の時代に、なぜユマ・サーマンは生身で戦わなければならなかったのか? - 『ショーン・オブ・ザ・デッド』との共通点:
コメディ、ホラー、アクションを「編集(DJ)」の感覚で繋ぐ、天才的なマッシュアップ術。
これまでの連載
- 第1回(導入編): タランティーノが選んだ「21世紀のTOP20」リスト全貌
- 第2回: 『RESERVOIR DOGS』― 疑心暗鬼と会話の映画学
- 第3回: 『PULP FICTION』― 時間軸の解体と“語り”の魔術
- 第4回: 『JACKIE BROWN』― 大人のためのタランティーノ
- 第5回(今回): 『KILL BILL Vol.1 & 2』― 復讐という名のジャンル映画愛
※本ページはプロモーションが含まれています
はじめに|タランティーノが帰ってきた!「静」から「動」への急発進
1997年、『ジャッキー・ブラウン』で成熟した大人のドラマを描き、「タランティーノは落ち着いた」と世界中が思ったその矢先。
彼は突然、6年もの長い沈黙に入りました。
「スランプか?」「引退か?」
様々な憶測が飛び交う中、2003年、ついにその沈黙が破られました。
スクリーンに映し出されたのは、黄色いトラックスーツを着たユマ・サーマン。
鳴り響くサイレンのようなテーマ曲。そして、日本刀で鉄球を振り回す女子高生。
「落ち着いた」なんてとんでもない。
タランティーノは、6年分のエネルギーをすべて「暴力」と「興奮」に変換し、アクセルをベタ踏みにして帰ってきたのです。
6年間の沈黙を破ったのは、映画愛の「闇鍋」だった
『キル・ビル』をひとつのジャンルで説明するのは不可能です。
なぜなら、これはタランティーノがレンタルビデオ店で働きながら貪り食った、ありとあらゆるB級映画への偏愛をぶち込んだ「闇鍋」だからです。
- カンフー映画の復讐譚
- マカロニ・ウェスタンの決闘
- 深作欣二の実録ヤクザ映画
- 70年代の日本アニメ
普通なら混ざり合うはずのない具材を、「俺が好きなんだから全部入れる!」という狂気的な熱量で煮込んだ結果、奇跡的に「極上のエンターテインメント」が完成しました。
ストーリーは単純明快。「裏切られた女が、元仲間を一人ずつ殺しに行く」。ただそれだけです。
しかし、そのシンプルさこそが、この映画を最強の「お祭り」にしています。
21世紀の「アクション・傑作群」と共鳴する、理屈抜きの興奮
今回、タランティーノのTOP20リストから比較対象として選んだのは、以下の作品たちです。
- 『バトル・ロワイアル』(日本)
- 『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(オーストラリア/アメリカ)
- 『チョコレート・ファイター』(タイ)
国も時代も違いますが、これらには共通点があります。
それは、高尚なテーマや小難しい理屈を一切排除し、「映像の快楽」と「肉体のアクション」だけで観客をねじ伏せるパワーを持っていること。
『キル・ビル』も同じです。
頭で考える必要はありません。ただ、網膜に焼き付くような色彩と、血湧き肉躍るアクションに身を委ねればいい。
そんな「映画を観るという原始的な喜び」を、21世紀のアクション傑作群とともに解き明かしていきましょう。
『バトル・ロワイアル』との共鳴|血しぶき舞う「残酷の様式美」
2000年に公開され、国会で議論になるほどの社会現象(問題作扱い)となった深作欣二監督の『バトル・ロワイアル』。
しかし、海の向こうアメリカで、この映画に誰よりも熱狂し、拍手喝采を送った男がいました。クエンティン・タランティーノです。
『キル・ビル』の血生臭くも美しい世界観は、間違いなくこの日本映画の遺伝子を継いでいます。
タランティーノが「21世紀最高の映画」と断言する理由
タランティーノは様々なインタビューで、こう公言しています。
「1992年に私が映画監督になって以降、唯一『自分が作りたかった』と嫉妬した映画。それが『バトル・ロワイアル』だ」
彼がなぜこれほど惚れ込んだのか。それは、この映画が社会的な倫理観を無視し、「殺し合い」という極限状態を、とてつもない熱量とエンターテインメント性で描ききったからです。
『キル・ビル』における、物語の整合性を無視してでも「カッコいい決闘」を優先させる姿勢は、まさに深作イズムへの回答だと言えます。
深作欣二へのラブレター——制服、日本刀、そして噴水のような血
その愛は、オマージュというレベルを超えています。
最も象徴的なのが、栗山千明演じるGOGO夕張の存在です。
女子高生の制服を着て、鉄球を振り回す彼女のキャラクターは、『バトル・ロワイアル』の千草(栗山千明が演じた役)への直接的なアンサーです。タランティーノは彼女をキャスティングするために、わざわざ脚本を書き換えたほどです。
また、手足を切断された瞬間に「プシャー!」と勢いよく噴き出す血しぶき。
リアルさを追求するならありえない描写ですが、タランティーノは『バトル・ロワイアル』や日本の時代劇に見られる、この「歌舞伎のような派手な演出(様式美)」こそが映画の醍醐味だと信じて疑わないのです。
リアリティよりも「カッコよさ」——倫理観を超えた暴力のアート化
両作品に共通するのは、暴力が残酷であると同時に、不謹慎なほど「美しい」ということです。
『バトル・ロワイアル』におけるクラシック音楽と殺戮の対比。
『キル・ビル』における雪の日本庭園での決闘。
そこにあるのは、「痛み」のリアリティではありません。
スクリーンというキャンバスに、鮮血という絵の具で描かれた「暴力のアート」です。
「倫理的にどうなのか?」という野暮な問いを、「カッコいいからいいんだよ!」という圧倒的な映像美で黙らせる。この潔さこそが、世界中のファンを熱狂させ続けている理由でしょう。
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「タランティーノがどこまで日本映画を愛しているか」を確認するには、実際に観比べるのが一番です。
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【この2本を続けて観るべき理由】
- 栗山千明の怪演: 『バトル・ロワイアル』での鮮烈な演技が、いかにして『キル・ビル』のGOGO夕張に繋がったのか。その歴史的瞬間を目撃してください。
- 血しぶきの美学: 深作欣二が日本で撒き散らした「熱狂」を、タランティーノがどうハリウッドで昇華させたのか。答え合わせのような視聴体験が楽しめます。
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『マッドマックス 怒りのデス・ロード』&『チョコレート・ファイター』との共鳴|CGなき「肉体至上主義」
近年、スーパーヒーロー映画の多くは、グリーンスクリーンの前で撮影され、派手な魔法やビームが飛び交います。
しかし、タランティーノはそれを良しとしません。
彼が愛するのは、ジョージ・ミラー監督の『マッドマックス 怒りのデス・ロード』や、タイ映画『チョコレート・ファイター』にある、「汗と砂と痛みが伝わる、本物のアクション」です。
『キル・ビル』で彼が目指したのも、デジタル技術で誤魔化さない、スタントマンと俳優の肉体を酷使した「昭和のド根性撮影」でした。
セリフはいらない、動きで語れ——ジョージ・ミラーに通じる映像言語
『マッドマックス 怒りのデス・ロード』が革命的だったのは、「行って、帰ってくる」という単純なストーリーを、ほぼセリフなしのカーチェイスだけで描き切った点です。
これは『キル・ビル Vol.1』のクライマックス、青葉屋での大立ち回りに通じます。
ユマ・サーマンが演じるブライドは、襲いかかる敵に対してほとんど言葉を発しません。
ただ斬り、突き、蹴り飛ばす。
「動き(アクション)」そのものが感情表現であり、言語となっているのです。タランティーノとジョージ・ミラーは、「映画は本来、サイレント(無声映画)でも成立するべきだ」という映像作家としての矜持を共有しています。
ユマ・サーマンとジージャー——スタントなしで挑む「戦う女」の説得力
タイ映画『チョコレート・ファイター』の主演ジージャー・ヤーニンは、「CGなし、ワイヤーなし、スタントなし」で危険なムエタイ・アクションをこなしました。その姿は、痛々しいほどの迫力に満ちています。
『キル・ビル』のユマ・サーマンもまた、撮影前に過酷なトレーニングを積み、カンフーと剣術を叩き込まれました。
彼女たちの動きには、CGキャラクターには決して出せない「重み」があります。
着地した時の足の震え、息遣い、そして眼光。
タランティーノが求めたのは、綺麗な殺陣ではなく、「生身の女性が、死に物狂いで戦っている」という説得力なのです。
アナログへの回帰——汗と痛みが伝わる「本物のアクション」
『キル・ビル』では、CGによる血液描写を極力避け、コンドームに偽血を入れたものを破裂させるという、70年代の超アナログな手法(スクイブ)が使われました。
『マッドマックス』の実車クラッシュ。『チョコレート・ファイター』のガチンコ格闘。
これら21世紀の傑作たちもまた、デジタルの利便性に逆らい、アナログな撮影にこだわっています。
なぜか? それは「観客は本能的に、嘘を見抜く」からです。
実際に車がぶつかる衝撃、実際に人が蹴られた時の肉の揺れ。スクリーンから伝わるその「痛覚」こそが、私たちを熱狂させる唯一のスパイスであることを、彼らは知っているのです。
Check!|タランティーノが認めた「本物」を目撃せよ
言葉で説明するより、その圧倒的な映像体験に身を委ねてください。
『キル・ビル』で火がついたアクション魂を、さらに燃え上がらせる傑作がU-NEXTで待っています。
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『マッドマックス 怒りのデス・ロード』
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Note|『チョコレート・ファイター』について
残念ながら現在、U-NEXTなどの主要配信サービスでの見放題配信は行われていません(202X年時点)。
もしレンタル店やDVD販売で見かけた際は、ぜひ手に取ってみてください。「ブルース・リーの再来」と呼ばれた少女の、CG一切なしの超絶アクションは必見です。
『ショーン・オブ・ザ・デッド』との共鳴|ジャンル映画の「究極のリミックス」
タランティーノは「映画監督」であると同時に、世界最高の「映画DJ」でもあります。
既存の名曲(過去の映画)をサンプリングし、繋ぎ合わせ、全く新しいビートを生み出す天才です。
そんな彼が「21世紀のイギリス映画で最も興奮した」と語るのが、エドガー・ライト監督の**『ショーン・オブ・ザ・デッド』です。
一見ふざけたゾンビコメディに見えますが、ここには『キル・ビル』と全く同じ魂——「ジャンル映画への偏愛と、それを再構築するリミックス精神」**が流れています。
ゾンビ×コメディ、侍×西部劇——エドガー・ライトと共有する「マッシュアップ」精神
『ショーン・オブ・ザ・デッド』の革命的な点は、「ゾンビホラー」と「ロマンチック・コメディ」を混ぜ合わせたことです(通称:Rom-Zom-Com)。
「彼女に振られたダメ男が、ゾンビパニックの中で復縁を目指す」という設定は、普通なら「混ぜるな危険」です。
しかし、『キル・ビル』も負けてはいません。
「日本のヤクザ映画」と「マカロニ・ウェスタン」と「香港カンフー」を強引に接続する。
タランティーノとエドガー・ライトは、「ジャンルという国境を破壊し、面白い要素だけを抽出してマッシュアップ(融合)する」という現代的な編集感覚を持った、稀有な作家同士なのです。
オタクによる、オタクのための映画——細部に宿る「元ネタ」への敬意
この2作は、単なるパロディではありません。元ネタへの「信仰に近い敬意(リスペクト)」があります。
- ショーン・オブ・ザ・デッド: ゾンビ映画の父ジョージ・A・ロメロ監督への愛が溢れており、後にロメロ本人から激賞されました。
- キル・ビル: GOGO夕張や黄色いトラックスーツ(ブルース・リー)など、引用元への愛が深すぎて、元ネタを知るファンがニヤリとする仕掛けが満載です。
「このシーン、あの映画のアレだよね!」
映画館からの帰り道、オタク同士でそんな会話が弾む映画。
彼らは、自分たちがかつて映画ファンとして味わった喜びを、今度は作り手として私たちに還元してくれているのです。
B級映画をA級の技術で撮るという、贅沢な遊び
本来、ゾンビ映画やカンフー映画は、低予算で粗削りに作られる「B級映画」の代名詞でした。
しかし、彼らはそこに「A級の予算と、超一流の技術」を注ぎ込みました。
『ショーン・オブ・ザ・デッド』のクイーンの曲に合わせたリズミカルなゾンビ退治。
『キル・ビル』のシルエットで魅せる美しい殺陣。
くだらないことを、世界最高峰のクオリティで大真面目にやる。
これぞ、成功したオタクだけが許される「史上最高に贅沢な遊び」です。画面の隅々まで行き届いたこだわりは、何度観ても新しい発見を与えてくれます。
Check!|笑って泣けるゾンビ映画の金字塔
「ホラーは苦手」という方にこそ、この映画を観てほしい。
怖さは控えめ、笑いは満載、そして最後には友情と愛にホロリとくる。
タランティーノも認めた「完璧な脚本」と「編集のテンポ」は、映画ファンなら必修科目です。
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分析|タランティーノが作った「ムービー・ムービー」の世界
タランティーノの映画には、2つの世界が存在すると言われています。
一つは『レザボア・ドッグス』のような、リアリティラインの低い「現実世界」。
もう一つは、その現実世界の住人が映画館で観るような、物理法則を無視した「映画の中の映画(ムービー・ムービー)」の世界です。
『キル・ビル』は、後者の頂点に立つ作品です。
飛行機で刀を持ち運んでも捕まらない。切断された腕から血が噴水のように出る。
ここでは「リアリティ」は無意味です。「映画的にカッコいいかどうか」だけが唯一の法律となる、タランティーノの妄想が具現化したユートピアなのです。
Vol.1(東洋の動)とVol.2(西洋の静)——二つの魂の融合
本作は元々1本の映画として撮影されましたが、あまりの長さに2部作に分割されました。しかし、この分割は結果として作品に奇跡的なコントラストを生みました。
- Vol.1:東洋の「動」
日本と香港映画へのオマージュ。ヤクザ、カンフー、アニメ、そして凄惨な殺し合い。アドレナリン全開の「アクション映画」です。 - Vol.2:西洋の「静」
アメリカのマカロニ・ウェスタン(西部劇)へのオマージュ。荒野、孤独、そして長い会話劇。情念と緊張感が漂う「ドラマ映画」です。
タランティーノは、Vol.1で「俺は世界一のアクションが撮れる」ことを証明し、Vol.2で「俺の本質は脚本と会話だ」ということを再確認させました。
この「静と動」の完全な融合こそが、本作を単なるB級アクションのパロディに留めず、映画史に残る傑作へと押し上げた要因です。
復讐の果てにあるもの——「母性」という意外な着地点
多くの人が『キル・ビル』を「復讐の物語」だと思っています。
しかし、最後まで観た人が気づくのは、これが実は「強烈な母性の物語(ラブストーリー)」であるという事実です。
主人公ザ・ブライドを動かしていたのは、かつての恋人ビルへの憎しみだけではありません。「奪われた娘を取り戻す」という、雌ライオンのような本能です。
ラストシーン、すべてを終えた彼女がバスルームで見せる表情。それは、復讐を遂げた殺し屋の顔ではなく、ただの「母親」に戻った瞬間の、安堵と喜びの涙でした。
血塗れの暴力の果てに、これほど普遍的で温かい「愛」が待っているとは、誰が予想したでしょうか。このギャップこそが、タランティーノの作家としての成熟を示しています。
『キル・ビル』が、21世紀のポップカルチャーに残した爪痕
公開から20年以上経った今でも、『キル・ビル』のビジュアルは消費され続けています。
- 黄色いトラックスーツ:
元々はブルース・リーへのオマージュですが、今や「強い女性」のアイコンとして、多くのミュージックビデオやファッションに引用されています。 - 口笛のテーマ曲:
バラエティ番組やスポーツの試合で、誰かが「反撃」を開始する時には必ずこの曲が流れます。
タランティーノは、既存のカルチャーをリミックスすることで、21世紀の新たな「共通言語(ミーム)」を作り上げました。
「映画の引用」で作られた映画が、今度は「引用される側」のクラシックになる。
これこそ、映画オタクである彼が成し遂げた、最も偉大な功績と言えるでしょう。
まとめ|理屈を捨てて、映画の「快楽」に溺れろ
今回、タランティーノが選んだ「21世紀の熱狂的な傑作」たちを通して、『キル・ビル Vol.1 & 2』を解剖してきました。
結論として言えるのは、この映画は「頭で考えるな、体で感じろ」という、タランティーノからの挑戦状だということです。
ストーリーの整合性や、物理法則のリアリティなど、この世界では些細なことです。
重要なのは、血の色が美しいかどうか。剣の振りが鋭いかどうか。そして何より、「映画を観ている間、最高にワクワクできたかどうか」。
タランティーノは、自身が愛するすべてのジャンル映画を鍋にぶち込み、私たちにこう叫んでいるのです。
「どうだ! 映画ってのは、こんなに自由で、デタラメで、最高に楽しいもんだろう?」と。
今回の4作品から学ぶ、タランティーノ流「ジャンル映画」の楽しみ方
もし今週末、『キル・ビル』を見返すなら、ぜひ以下の視点でその「狂気」を味わってみてください。
- 「様式美」に酔いしれる
(『バトル・ロワイアル』的視点)
派手な血しぶきや、雪の庭園での決闘。リアリティを無視してでも貫かれた「画(え)としてのカッコよさ」を堪能しましょう。 - 「肉体」の説得力を感じる
(『マッドマックス』&『チョコレート』的視点)
CGではない、生身のスタントマンたちの汗と痛み。画面の端々で体を張っている彼らへの敬意を忘れずに。 - 「元ネタ」を探す旅に出る
(『ショーン・オブ・ザ・デッド』的視点)
黄色いスーツ、千葉真一(服部半蔵)、マカロニ音楽。画面の隅々に隠された「オタク的な引用」を見つけるたび、あなたはタランティーノと握手している気分になれるはずです。
Check!|今夜は脳みそをオフにして、熱狂の渦へ
仕事の疲れや日々の悩み。そんなものを吹き飛ばす「劇薬」がここにあります。
難しいことは一切抜き。ただ、圧倒的な映像と音の洪水を浴びるだけの至福の時間。
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次回予告
個人の復讐劇(キル・ビル)を終えたタランティーノ。
次に彼が刀を向けたのは、なんと「歴史そのもの」でした。
「映画には、史実すら書き換える力がある」
ナチス占領下のフランスを舞台に、映画という武器を使って「あの戦争」を終わらせようとした、タランティーノ史上最も危険で、痛快な嘘。
【連載 第6回】
『INGLOURIOUS BASTERDS』― 歴史を書き換える映画的暴力
次回は、ブラッド・ピット率いる野郎どもが暴れまわる『イングロリアス・バスターズ』を深掘りします。
タランティーノが選ぶ21世紀の映画リストから、虚構と現実が交錯するスリリングな映画体験に迫ります。
お楽しみに。


